取消・検認

EPA/FTAを利用する上では関税の減免が受けられる一方、利用者には義務・罰則も定められています。
また、輸入国政府は原産地証明書の内容などについて調査(検認)を行うことがあります。原産地証明書を使ったあとに誤りが見つかった場合には、特恵税率が否認されるなど、大切な取引先や自分の会社に大きな損害をもたらす可能性がありますので、十分ご注意ください。

 

実は原産品じゃない?!
当初、原産地証明書を取得したときには原産品であった製品も、長年、製造を続けている中で、材料を変更したり、生産場所を海外に移したりすることで、原産性がなくなってしまうこともあるでしょう。しかし、そのことが原産地証明書の発給申請担当部門で認識されず、原産品ではない製品に原産地証明書を使ってしまった!

もしもこんなことが起きたら、どうすれば良いのでしょうか?

このような場合、法律に従って、日本商工会議所(日商)など、しかるべきところに報告をしなければなりません。原産品でないことを知っていながら報告しない場合には罰金が科される場合があります。

日商などへの報告を行った後には、原産地証明書の発給が取り消されます。そして、取り消されたという事実は、経済産業省から輸入国政府に通報されます。

通報を受けた輸入国政府は、特恵税率の適用を否認することになるでしょう。

特恵税率の適用が否認され、もともとの関税率との差額を払うのは当然のことですが、関税差額分だけでなく、輸入国の制度に基づくペナルティが課される可能性があります
輸入通関から何年か経過していた場合、その期間に応じてペナルティが大きくなることも予想されます。

また、日商による原産品判定結果には、有効期限や使用回数の制限が定められていないため、原産品でない製品が、長年にわたり繰り返し原産地証明書に使われ続けることも多く、たった一つの原産品判定が間違っていただけでも、原産地証明書の取り消しが膨大な件数になり得るのです。

関税差額やペナルティは輸入者に課されるものですが、原産地証明書の誤りが原因となれば、輸出者に負担を求められることもあるでしょう。
そして、金銭的なダメージに加え、輸入国税関や輸入者の信頼を失うことにつながります
検認
検認とは、原産地証明書を使った案件に関する輸入国政府による調査です。書面で調査が行われる場合と、実際に日本の生産場所などを訪れて調査が行われる場合があります。

多くの協定には、検認は原産性の有無を判断するために行うとされているため、原産性があることを立証できるか否かが重要です。また、そのほかにも原産地証明書の記載内容やインボイスなどの船積書類との整合性なども問われる可能性が考えられます。

検認は、原産地証明書を使った直後に行われるとは限らず、数年経過してから行われる場合もあります。協定には、いつまで検認に備えるべきであるかは明確に書かれていませんが、書類保存期間中は検認に対応できるような体制が必要です。

もしも検認に当たった場合、原産性の根拠資料が提出できなかったり、原産性が失われたりした場合、輸入国政府は特恵税率の適用を否認することになるでしょう
否認後、関税差額、ペナルティが課されるリスクに関しては、前述のとおりです。

【EUの検認】
一般的に検認は原産地証明書に関して何か疑わしい点がある場合に行われますが、EUの場合は、特段疑義がない場合でも検認を行います。このようなこともあり、EUは検認の数が非常に多い(2016年18,542件。欧州委員会からの情報)ようです。

パートナー企業(同意通知元、サプライヤー)のミス
うちの会社は、EPA/FTAの管理をしっかりしているから大丈夫。このような頼もしい会社もあります。
特に、他社が行った原産品判定の同意通知をもらって、発給申請のみを行う輸出者には、このようなところが多いようです。

確かに、原産地証明書を取得するまでのプロセスでミスが生じやすいのは、原産品であるかどうかの判断であり、その裏付け方です。発給申請のプロセスでは、それほど深刻なミスは生じないでしょう。
原産品判定は生産者に任せているし、生産者だって日商の審査も受けているのだから安心だ、と考えていませんか?

残念ながら、その考えは危険です。

年間30万件あまりの原産地証明書を発給している日商ですので、すべての製品について、生産工程や材料情報を詳細に確認することができるはずはありません。
生産者が示した情報が間違っていれば、日商が間違った原産品判定を行ってしまうこともあるのです。

もし同意通知元の生産者が誤って原産品判定を受けていたらどうなるでしょうか。
前述のように、原産品でなかったことが発覚したら、日商などへの報告をする必要があり、原産地証明書の発給が取り消されます。

このような危険は、輸出者と生産者の間だけでなく、生産者と材料サプライヤーとの間でも存在します。原産材料であるはずの材料が非原産材料だったとなれば、最終製品の原産性もなかったことになり、やはり原産地証明書の発給取消しにつながります。

悪いのは生産者や材料サプライヤーであったとしても、輸入国政府や輸入者には、輸出者の名前が伝わっていますので、輸出者の信頼への影響は必至です。同様に、材料サプライヤーのミスは、生産者の信頼に関わります。